存在もいつかは溶けてく

独断的気ままに綴る、あらしさんの話

映画『忍びの国』〜無門のキャラクターについて〜

公開から3週間。まぁ行くだろうなとは思ってたけど、ここまで5回。家族が入院という非常事態に見舞われもしたが(現在は快癒)映画館に行く隙を常に伺う、そんな日々が続いている。

 

事前の宣伝番組や対談など、かなり情報を仕入れていった。というより、自動的にそうなってしまった(汗) 原作も2度読んでいるため、ハッキリ言って映画を観る前から「既に手に取るようにわかる」というお腹いっぱい状態で、大丈夫か?初見の感動とかあるのか?という謎の心配(笑)そのうち「いやいい、どーせ何回も観にいくんだ。こうなったら5回も10回もおんなじ、みたいに思っとけ」という、これまた謎の納得方法で封切りを迎えた。

 

というわけで、事前の妄想が完全に肥大した状態で出かけた初日だったが、予想と少し違うところがあったので書き残しておく。まず無門のキャラクター像。もっと〝あり得ないくらいのスーパーマン〟だと思っていた。全能感に溢れ、まわりのモブ忍者とは明らかに違う佇まいで…それこそ「女子をキャーキャー言わせるスゴい奴」って感じなんだと思ってた。 予告ではそのテイストもまずまず感じていたのだが、本編でお話の中に染まっている無門は、なんていうんだろう地味…っていうのとは違う、最強は最強なんだけど、どこか〝実体感〟のあるものに仕上がっていた。つまりしっかりと〝下忍〟だったのだ。忍者衆の中に紛れて芝居するシーンがいくつかあるが、ちょっと油断すると一瞬どこ行ったかわかんなくなる(笑)すごい、大野さんが〝モブ化〟してる。そして忍んでいる。最強ぶりよりもむしろ〝そっち〟のほうが印象に残ったぐらいだ。

 

作品全体のテイストとしてもそう。事前に期待していたことはいわゆる「歴史スペクタクル!!」みたいなやつ。ド派手なドンパチがガンガンにあって、手に汗握って「いや〜壮快だったねえ〜スッキリしたー」って言いながら映画館を後にする…そんな感じのを想像してた。

 

しかしそういったスケール感は過剰に前面に出ることはなく、むしろ「人間ドラマ」だった。もちろん原作通りに話は進むし、合戦シーンも見応えあった。ただ、観終わった後で自分の中で強く残ったのは、すごく「人を描いている」ということだった。そして、アクションや大人数を動員したシーンも結局は人を描くためにあるように思えた。そう、忍びの国』は確実に「宣伝ではちょっと説明しにくい」類の魅力がある映画であり、この「地味とかではない予想外に地に足のついた感じ」にヤられる映画なのである。自分でもこの反応はかなり意外だった。

 

とはいえ、アクションは圧巻の一言。楽しみにしていた「川」の対決も本当に素晴らしかった。まず、動ける空間がせいぜい直径2m以内という殺陣の目新しさ。前後左右のスペースが取れないから上下や回転の動きで魅せるしかないわけだが、大野さんをキャスティングした意味合いが最大に活きていて本当にシビれた。ただ、これも自分的に意外、というより苦笑いだったのが、「ひゃあ!あんな動きができるの?こんなのできるの?すごい!!」とビックリしきりかと思っていたら、コン盤とかで余程彼の「動きの型」が網膜に焼き付いているのだろう。どちらかというと「こんなの初めて〜♡」というよりは「そうそう!そういうのもイケるよね。うん、そうそう!」みたいな改めての確認作業みたいに観てた(笑)ヤバい。

 

あまり専門的なことはわからないが、バトルシーンについては、思っていたほどアクロバティックでもスタイリッシュでもなかったように思う(いやそりゃ、実際やったら大変なのは百も承知なんだけどw ) 川の対決もしかり、あと日置大膳との一騎打ちのところもそう。CGに頼るところがありながらも、印象としてどこかに「生身」を感じ、観ながら身体に力が入っちゃう。そして大野さん、これはすごいデカい声で言いたいんだけど、小柄なのに全然「力負け」してない(ふうに上手く撮られてる)の!メチャクチャカッコよかった!彼の「軽さ」や「柔らかさ」を必要以上に出してこないああいう見せ場、本当にグッときてしまう。

 

と、ここまで予想と違った事柄を挙げてみたが、全然ガッカリしてないし、むしろ嬉しいことだらけ。関連して気付いたのだが、私、映画公開前は「無門様」と〝様〟づけして呼んでいたのが、観てからはほとんどつけていないように思う。たぶん観に行く前は「キャーキャーできる」タイプの主役を求めてたんだろう。国民的グループのリーダーである大野さんが演る以上、それは免れないとも思ってたし、エゴ丸出しなことを言えばいわゆる「アイドル映画」でも全然構わなかった。でも中村監督が私たちに届けたい無門はそうじゃなかった。超人でありながらどこか〝身近〟で寄り添いたい、そう思えるキャラクターだったし、アクションですらそれを物語っていた。監督が「そのままでいい」と要求した大野くんに「アイドル」の要素はたぶん含まれておらず、それは「私たちが知らない(けど監督は知っている)」大野くんなのかもしれないな、などと思うともう居てもたってもいられなくなる。ホラ、また映画館に行きたくなってる(笑)

 

無門の動きや表情については、監督とかなり綿密に詰めながら撮影を進めていったと大野さん語っていたが、それも何回か観てるとよくわかる。面白すぎずに面白いというか、本当に「誇張」の半歩手前くらいなのだ。たぶん「笑かしにかかって」きたらああはならなくて、滲み出るものを大切にしたかったんじゃないだろうか。実に絶妙だし、伊賀イチ最強忍者という突飛な設定でありながら、すごく近しい存在として無門を愛しく感じられる、ダイレクトな要因だと思う。

 

というわけであと2回くらい、なんとか観にいけたらと思っているが、封切りから少し日が経ち上映回数も減って余計時間が組みにくくなる。とにかく、この中毒症状ヒドイ。

 

ああ…たいして話題が広がらずに闇雲に文章だけダラダラと長くなってしまった。物語の中身のこととかまだ書きたい事たくさんあるのに全然書いてないじゃん!すいません!(爆)そっちの時間を作ることも、チビッコが夏休みに突入した今の私にとっては大問題となっているが(汗)なんとかまた記事をあげに戻ってきたい。忍べ、私!!(笑)